The Gold Standard

知識なき指導は罪である。
世界最高峰の資格、NSCA-CPT / CSCSを攻略せよ。

1. NSCA Certification Overview

NSCA(National Strength and Conditioning Association)の資格は、世界中のフィットネス現場で最も信頼されています。 試験はピアソンVUEテストセンターにてCBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。

項目 NSCA-CPT (認定パーソナルトレーナー) CSCS (認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
対象 一般人の健康増進、ボディメイク アスリート、スポーツパフォーマンス向上
受験資格 満18歳以上 + 高卒以上の学歴 学位(学士号)保持者 ※スポーツ科学以外の学部でも可
難易度 標準 (合格率 約60-70%) 高難度 (合格率 約40-50%)

2026年度試験に向けた展望

NSCAは定期的に「職務分析(Job Analysis)」を行い、試験問題を更新しています。 2026年に向けた傾向として、CSCSでは「科学的基礎」に加え、「現場でのコーチング技術」「テクノロジーの活用(VBT等)」「女性アスリートや特殊な環境下での栄養指導」の比重が高まると予測されます。 また、CBT方式は継続されますが、セキュリティチェックは年々厳格化しています。学習においては最新の教科書(Essentials of Strength Training and Conditioning 第4版/第5版)への準拠が必須です。


2. Core Knowledge (重点学習分野)

Biomechanics: テコの原理と筋活動

CSCS試験で頻出なのが「テコの原理」です。人体の関節運動を物理学的に理解する必要があります。 機械的有利性(Mechanical Advantage: MA)が1.0より大きいか小さいかが鍵です。

  • 第1種テコ (Balance): 支点(F)が力点(E)と作用点(R)の間にある。例:トライセプスエクステンション(肘関節)。
  • 第2種テコ (Power): 作用点(R)が真ん中。MA > 1.0 で大きな力を出せる。例:カーフレイズ(足関節)。人間の身体には少ない。
  • 第3種テコ (Speed/ROM): 力点(E)が真ん中。MA < 1.0 で力は弱いが、スピードと可動域に優れる。例:バイセップスカール(肘関節)。人体の関節の大部分は第3種テコである。
Physiology: 筋収縮のメカニズム(滑走説)

筋肉がどのように収縮するかをミクロレベルで理解します。ハクスリーの「滑走説(Sliding Filament Theory)」が基礎となります。

[Image of sliding filament theory actin myosin]
  1. 活動電位: 運動ニューロンから刺激が到達し、筋小胞体からカルシウムイオン($Ca^{2+}$)が放出される。
  2. 結合: カルシウムがトロポニンに結合し、トロポミオシンが移動してアクチンの結合部位が露出する。
  3. クロスブリッジ形成: ミオシン頭部がアクチンに結合する。
  4. パワーストローク: ATPの加水分解エネルギーを使ってミオシンがアクチンを引き寄せる(収縮)。
  5. 解離: 新たなATPが結合することでクロスブリッジが解離する。
Program Design: 負荷設定のガイドライン

NSCAが定める「目的別レップ数と強度」の定義は暗記必須です。

トレーニング目的レップ数強度 (%1RM)セット数休息時間
筋力 (Strength)≦ 6≧ 85%2-62-5分
パワー (Power)1-575-90%3-52-5分
筋肥大 (Hypertrophy)6-1267-85%3-630-90秒
筋持久力 (Endurance)≧ 12≦ 67%2-3≦ 30秒

3. Practice Exam (模擬問題)

クリックして解答と解説を確認してください。

Q1. [生理学] マラソン選手がラストスパートをかける際、最も動員される筋繊維タイプはどれか?
正解: Type IIa (あるいはType IIx)
通常、マラソンではType I(遅筋)が主役ですが、ラストスパートのような高強度の局面では、より大きな力を出せるType II(速筋)繊維が追加動員されます(サイズの原理)。Type Iのみでは出力が足りません。
Q2. [バイオメカニクス] カーフレイズ(爪先立ち)はどのテコに分類されるか?
正解: 第2種テコ
支点(母指球)、作用点(体重・重心)、力点(下腿三頭筋の牽引)の順に並びます。これは「小さな力で大きな重量(体重)を持ち上げられる」構造であり、機械的有利性は1.0より大きくなります。
Q3. [テスト測定] アスリートの測定を行う際、以下の種目の実施順序として適切なものはどれか?
A. 1.5マイル走, B. 垂直跳び, C. 1RMベンチプレス
正解: B (垂直跳び) → C (1RM) → A (1.5マイル走)
疲労の影響を避けるため、テストは以下の順序で行うのが鉄則です。
1. 非疲労系(身長・体重)
2. アジリティ(敏捷性)
3. 最大パワー・筋力(垂直跳び、1RM)
4. スプリント
5. 局所的筋持久力
6. 有酸素性持久力(1.5マイル走)
有酸素テストを最初に行うと、その後のパワー発揮に悪影響が出ます。
Q4. [栄養学] 筋肥大を目指すトレーニング期のタンパク質摂取推奨量は?
正解: 体重1kgあたり 1.4g 〜 2.0g (またはそれ以上)
一般成人は0.8g/kgですが、激しいトレーニングを行うアスリートは窒素バランスを正に保つため、少なくとも1.4g以上が必要です。最近の研究では2.0g以上摂取しても安全であり効果的とされています。
Q5. [プログラム] オフシーズンの初期(準備期)における優先順位として最も高いものは?
正解: 筋肥大 / 筋持久力 (基礎作り)
ピリオダイゼーションにおいて、オフシーズン初期は「低強度・高ボリューム」で基礎的な体作り(筋肥大)を行います。試合が近づくにつれて「高強度・低ボリューム(筋力・パワー)」へ移行します。